赤十字語学奉仕団アクセシブル東京の活動から見るバリアフリーの発展
開催日 | 2019年11月10日(日) |
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開催場所 | 日本赤十字社201会議室 |
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第一部:アクセシブル活動の変遷と東京バリアフリーの現状
11月10日、参画プログラムを開催した。はじめに、赤十字と主催団体である赤十字語学奉仕団の説明を行った後、第一部で1980年代のアクセシブル活動の開始から現在までの変遷を説明し、現在運営中のサイトの紹介と2016年に高尾山の調査の時にNHKの取材を受けた番組のビデオを上映した。続いて、第2部の予備知識として障害者福祉の発展の歴史と国連施策の説明、障害者理解のために障害の種類について説明、障害者と関わるポイント、2020パラリンピックに先駆け差別や偏見、不理解を取り払い普通に接することの重要性などを説いた。付け加えて用語として「バリアフリー」、「アクセシビリティー」、「ユニバーサルデザイン」を説明。最後に点字ブロックの種類の説明と街中での使われ方を説明して1部を終えた。
L1 アクセシブル東京の変遷と東京バリアフリーの現状
L2 障害者福祉の歴史など
第二部:目の見えない人と車椅子利用者の目線から都内散策、街の問題を探る
二部では二人の障害当事者(全盲の方と脊髄損傷者)を招いて普段体験している様々な問題について解説してもらった。お二人には事前に新宿の街を歩いていただき、街中での行動のポイントや障害について検証してもらった。その模様を動画に編集し会場で流しながらそれぞれ解説してもらった。様々な問題点が浮き彫りになった。
盲人の立場での問題
S1 目の見えない人の目線から都内散策街の問題を探る
- 券売機は全て使えるわけではない(専用機と見分けがつかない、盲人対策が無いものあり )
- 改札口を通る時、出てくる人が誰も譲ってくれず入れない
- 入場の区別は分からない(決めて欲しい )
- ホーム階段の手すりの点字で行き先を確認できるのは有効
- 工事床のラバー製のブロックはわかりにくい
- ホームの狭小箇所は危険
- エスカレーター、どちらが上りか分からない(音声案内が聞こえない)
- トイレ案内板は分かりにくいが、音声案内は有効
- ATMはボタン操作で使用出来る、振り込みは出来ない
- 誘導ブロックが改札やエスカレーターに向かっていないのが不便(危険と見なされているのか)
- 立体施設は把握が難しく進む方向の把握が難しい
- エスカレーター端の長い手摺りはじゃま、間違って入ったとき反対に行きにくい
車椅子利用者の問題
S2 車椅子利用者の目線から都内散策街の問題を探る
- エレベーターは譲り合って利用したい、車2台くらいは乗れる(車椅子、乳母車、高齢者優先)
- 電車に乗車するとき降りる人から車椅子は目に入っていない
- 車椅子専用スペースは使いやすい
- ホームにはエレベーターは1台、いつも便利な位置ではない
- 幅の狭い車椅子は普通の改札を通過できる
- 砂利道は車椅子には大敵、粒が大きいとタイヤが捕られて進みにくい
- 街には様々な段差がある、2センチくらいから引っかかる
- 店の前の段差、2段以上あると一人では入れない
- 段差の乗り越え、1段ならかなり可能性が広がる
- 店舗入り口の重い扉は開けにくい
- ホームでの車椅子や乳母車、視覚障害者の転落事故はホームドア普及で減っている
- 誘導ブロックは車椅子にとってはでこぼこ道と同じ
- エスカレーターは普通に利用できる
- バスに乗車、スロープの出し入れは手間、引出式のほうがお互い楽
- 階段解消のスロープはいつも便利な場所ではない(差別)
座談会の話題から
S3 視覚障害者、車椅子利用者の視点で街のバリアフリーを検証する
ビデオでの解説に続いて、座談会形式でお二人に再登壇頂き話を深めた。
調査では出なかったその他の体験談などを付け加えていただき、日本ではまだ足りない心のバリアフリーの提唱を行った。
- 信号機などの音声案内は工夫されていて有効、エレベーターも上下が分かるサイン音がある
- 食券販売機などのタッチパネルは全く使用出来ない
- 駅のホームなどで誘導ブロック上に荷物を置かないで欲しい
- 方向を示す看板や駅の掲示板は見えない
- 誘導ブロックはエスカレーターに向かっていないので困る、危険とみなされている
- 誘導ブロックはつねに自分の行きたいところに向かっている訳ではない
- ブロックは真っ直ぐ歩くのに有効
- 車内では一般の人から放送がうるさいと言われ音量を下げている場合、聞こえないで困る
- 障害者専用駐車場に車止めコーンが置いてあって駐車できないことがある
- 駅ホームで仕方なく危険な位置を走行するが駅員にしかられることがある
心のバリアフリーについて話した
- 調査の時2カ所で声を掛けて助けてくれた人がいた、ありがたい
- 電車で席を譲るときは一声掛けて欲しい、どんな人か分かるしお礼が言える
- 久しぶりに会って話しかけるときは名前を言ってから話しかけるのが良い
- 障害は意識せず普通に付き合えばよい、飲み会などのときは違和感なく話が出来る
- 障害を負った後も人の言葉に助けられ前向きになれた
- 車椅子利用者でも犬友なら障害を意識せず普通に話ができる
障害者は困っていない時は普通の人、元々障害者というくくりで生まれてきたわけでは無い、障害が有るという以外は普通(アスリートなどは普通以上かもしれない)なのである。自分の周りの人と同じく接すれば良い、困っていたら自然に助ければ良い。それが「心のバリアフリー」である。日本の政策は、階段にはスロープ、エレベーターやエスカレターを付ける、扉を自動ドアにする、ホームドアを整備するといったハードウエアの整備をすることによってバリアフリーを実現しようとする。そんなものが無くても自然に助け合える人の心が大事なのである。2020年のパラリンピックに向けて一人一人がそんな些細な意識を持つことが大切であるとして会を締めくくった。
終了後コメントを頂いた
- 動画を用いて障害を持つ方に潜んでいる危険や不便を見ることができて良かった。
- 話や記事ではイメージすることが難しかった部分を、より理解できた。
- 参加してから、いつも何気なく通っている道も注意深く観察するようになり、いろいろ気づいたり、不便を自分で見つけたりするようになった。見つけたところで何もすることはできないが、困っている人がいたらサポートできたらいいなと思っている。
- 2回を通して非常に多くを学べたイベントだった。
という内容でした。そんな気づきをしてもらうことが今回のイベントの目的であり、そんな人が一人ずつ増えることで世の中が変わっていくのだと思う。そんな人を一人でも作れたなら今回のイベントは成功だったと言えると思う。
報告:赤十字語学奉仕団 伊藤雅彦