車いすで観光 高尾山

毎年高尾山を登頂している J.J.です。高尾山は都心から約1時間で行くことができる便利さ、そして2007年にミシュラン三つ星を獲得し世界にも認められ、日本人や海外からのリピーター観光客に大変人気な観光スポットです。また、ケーブルカーもあり、車いすユーザーの皆さまでも登山気分を楽しむことができます。

「高尾山って車いすでも行けますか?」というお問い合わせを良く受けますので、今日は車いすの登頂は当活動の使命と考え、5名の仲間たちとともに「車いすで登山」チャレンジしてまいりました。 

あくまでも実現性を検証するための調査であるため、歩いて帰る可能性があることから、今回は実際の車いすユーザーではない者が車いすに乗って行った点、補足させていただきます。 

尚、本日の調査にはNHKの取材が入り、2016年10月21日(金)NHK総合 「ひるまえほっと」の1コーナーで紹介される予定です。

高尾山の玄関である駅前
2016年にグッドデザイン賞を受賞したお洒落な外観です。
ケーブルカー 清滝駅

ケーブルカー

京王線高尾山口駅より徒歩5分のケーブルカーの清滝駅からに乗り込みます。

ケーブルカー 清滝駅(山麓)

さあ、出発です!事前に駅員の方にお伝えすると傾斜に合わせたボードを設置してくれます。

車いすでケーブルカー乗車
ケーブルカーに乗車用のボードを設置

ホームの傾斜と車両の水平な床とをなじませるために絶妙に加工された手作りの板を使っていました。 

ケーブルカー車内

約6分の乗車で山腹に到着します。高尾山駅ではこちらもボードをご用意してくれており、到着次第駅員さんが設置してくれました。 

ボードの設置。麓の清滝駅とはボードの形が違いました。
ケーブルカー乗り場からのエレベーター
ケーブルカー乗り場と駅の外にでるためのエレベーター外観

山腹からの眺望でも十分綺麗で、幸い晴天だったため東京を一望できました。 

山腹からの眺望
山腹での取材風景

ここまでは補助の方がいなくても車いすで辿りつけるかと思います。(但し、個人差によります) 

薬王院

ここからは薬王院までは比較的平坦で整備されている道が続きます。 

ケーブルカー駅からすぐ
少し進むとお土産屋、お食事屋さんが並びます

更に進むと、左側に高尾山さる園・野草園があります。但し、入口入ってすぐ、また園内は2階がありいずれも階段のみとなるため、残念ながら車いす利用者にはおススメできません。 

高尾山さる園・野草園外観
高尾山さる園・野草園入口

そして更に進むと次は、左は階段が長く続く“男坂”、右は迂回ルートとなる“女坂”になります。 

左が男坂、右が女坂
女坂に進む

ここで車いすユーザーは迷わず女坂を選びます。段々坂もきつくなってきます。

 薬王院の入口に到着すると階段があります。車いすは山門左側の小道から上に上がれます。 

薬王院山門
薬王院階段
薬王院からの車いすルート

本殿の前は階段になっていて、一号路ではここを登るのが正規ルートです。但し、車いす利用の場合は、階段を上がらずに直進し大本坊の手前を左に曲がって行きます。この道は登山ルートのマップには掲載されておりません。またここからは舗装されていない道のため、砂利があったり、山ならではのくぼみもあります。また山の傾斜も山頂に近づくにつれてキツくなっていきます。 ※(本殿の前は階段になっていて、一号路ではここを登るのが正規ルートです。但し、車いす利用の場合は、階段を上がらずに直進し大本坊の手前を左に曲がって行きます。) 

山頂

砂利~舗装されている道の段差
舗装されている道、されていない道の段差
少しずつ足場が悪くなってきます

途中傾斜がキツい箇所では用意した三角巾をロープ代わりに使って前二人の引き手を追加して重力を分散しました。今回は持ち合わせていた三角巾を使いましたが、布地に痛みが生じたところがありました。本来であれば十分な強度のあるロープなどを用意する必要があります。

車いす前方(左右2か所)に紐を通しそれを2人で引っ張ります

山頂まで行くには、いくつかの傾斜を越えるためある程度体力のある男性の力が必要になります。ただ、この方法であれば重力が分散されますので女性でも車いすのサポートができます。

左右の人の歩調や引く力は合わせてください

薬王院から約30分程度で山頂に到着しました。

山頂からの景色
山頂での集合写真

車いすユーザーがケーブルカーを利用して山頂まで行くのに、ケーブルカーの待ち時間を含めて約2時間かかりました。(混雑や歩く早さにもよる)

下り

山頂からの下山には同じルートで戻ります。下りでは傾斜があるところでは勢いがつくため、前向きに下ると危ないところなどがありますので注意が必要です。

山頂からの下り
前向きに下ると危ない箇所も

当日は車いす利用者をお見かけすることはありませんが、同ルートでベビーカーを利用した観光客は何組か拝見しました。

検証結果

私たちの検証結果 「車いすでも山頂まで行ける!」


清滝駅~山腹:ケーブルカーの利用で車いすユーザーのみ、若しくは補助者1名で行くことが可能。山腹~山頂:補助者3名が必要。

途中舗装されていない道になるため、雨などでぬかるみの影響がある場合は危険ですので、天候が良く、補助をされる方が3名以上いる場合に限る、というのが条件になるかと思います。

実際車いすに乗らせていただいた私としては、山を登って行く風景、山からの景色、自然の風を堪能することができましたが、一方、介助をされる方は安全第一で介助に徹する必要があり、本来の山登りを楽しむことはないものと考えてください。また、臨機応変な対応が必要となるため、車いすに乗られる方と介助者の信頼関係も必要だと感じました。

また車いすでの登山につきましては、リスクを伴う可能性があるため上記条件以外で注意いただきたい点も補足させていただきます。

1.下山の途中の未舗装路で、前向きに下ると危ないところがあり、数十メートル連続して後ろ向きに(背中を斜面下側に向け、介助者が進行方向を肩越しに見ながら車椅子を支えながら)歩く部分が数か所ありました。

2. 車輪の直径が小さい車椅子(主に電動のもの)だと未舗装路が進みづらいようです。

3. 前二人引き手のとき、引く上下角が左右で違うと乗り心地が悪く、左右の人の歩調や引く力を揃えないと引きにくく、また、引き手の足に車輪があたる場合があります。

4.  今回の検証実験の、晴天という天候、ぬかるみのない路面、不備のない車いす、車いすに乗った者(女性)、介助者(男性2名、女性1名)ともに健康状態が良好であった事による総合判断であり、これを参考として状況等に応じて慎重にご判断をお願いします。

高尾山のトイレ 

高尾山には主要ルートにいくつかのユニバーサルトイレが用意されています。

1. 清滝駅
ユニバーサルトイレとしての機能は十分あり、清潔感もあります。

ケーブルカー 清滝駅 トイレ入口
ケーブルカー 清滝駅 トイレ内部

2. 山腹
ユニバーサルトイレとしての機能は十分ですが、清潔感に少し欠けるのが難点です。

高尾山麓(ケーブルカー乗り場すぐ)トイレ入口
高尾山麓(ケーブルカー乗り場すぐ)内部

3. 山頂付近
2階建ての建物となっており、高尾山で最も整備されたトイレです。ユニバーサルトイレとしての機能は勿論ですが、ベビーベット、ウォシュレットも完備されてます。

山頂付近トイレ 入口
山頂付近トイレ 内部

4. ビジターセンター内トイレ
山頂にあるビジターセンター(外)の右脇にトイレがありユニバーサルトイレも完備されてます。こちらも新しいトイレのため大変キレイで、ウォシュレットも完備されてます。

ビジターセンター外観
ビジターセンター トイレ入口
ビジターセンター トイレ内部

ケーブルカーの清滝で出発前にトイレに入り、山頂(or 付近)で下りに備えて再度トイレで用を済ませることをお勧めします。 

最後に

前回(1964年)の東京オリンピック・パラリンピックが発端となり開始したアクセシブルの活動。次回2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、今後多くの観光客が国内外から東京周辺に集まります。観光地のバリアフリーについても注目が上がり、今回はNHKの取材が入りました。アクセシブルの活動が少しでも多くの方の目に触れ、本ブログが少しでも高尾山登山を検討、躊躇されている方の好材料になれば幸いです。

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